各種相談機関等において、緊急な受け入れが必要なケースは、対応に苦慮するものであるが、さらに複雑・複合の課題を抱えた人や家族の場合には、この困難が倍加することになる。そのため、実際には、緊急に受け入れられる施設自体が極めて少ない。高齢や障害でも、ショートステイは通常からほぼ満床に近く、また、受け入れ実績のない人の、緊急での受け入れは断られる場合が極めて多い。生活困窮者自立支援法における一時生活支援においても、例えば、認知症や精神の障害を持っている人は拒否されることも珍しくない。また、複数の課題を抱えたケースともなると、どこの部署が担当すべきか、どの制度をもって救済することが適切なのか、場合によっては、制度の狭間に当たるようなこともあり、対応自体をどこの部署が所管するのかを確定するのに多くの時間を費やすことも稀ではない。
これらのことから、速やかな対応が求められるケース(たとえば、同居家族との突然の死別や手帳のないボーダーの障害者、支援機関につながっていない支援の必要な認知症の人、行き場のない保護の必要な虐待やDV被害者(家族)、火災や延焼で居場所を失った人など)においては、いつでもだれでも緊急受け入れが可能な、医療における救急外来、救急病院・診療所のような急性期に対応する、属性を問わない「緊急一時支援」の機能が、介護や保育等福祉の分野においても求められている。
しかし、この機能は、全国的に一般どころか、福祉の専門職や行政職にも知られていない。これらの機能を持つ施設は、制度の狭間に向き合っているため、制度による援助も少なく、使命と熱意によって運営されていることが多く、このような施設の認知や必要性を発信していくこと、さらには、各地に生み出されることが、社会的孤立を防ぐ要素となると考えている。
本事業では、全国の自治体や福祉関係の緊急受け入れの実践団体へのアンケートやヒアリングなどを実施し、実態の把握と整理を行う。その結果を取りまとめ、事例集や実践ガイドを作成し関係者に配付するとともに、全国に波及するためにシンポジウムの開催、実践者のネットワークを構築する。 |