宅老所
小規模多機能ケア
ユニットケア
逆デイサービス
地域サテライトケア
地域共生ケア
宅老所とは?

 民家などを活用し、家庭的な雰囲気のなかで、一人ひとりの生活リズムに合わせた柔軟なケアを行っている小規模な事業所を指す。

 通い(デイサービス)のみを提供しているところから、泊まり(ショートステイ)や自宅への支援(ホームヘルプ)、住まい(グループホーム)、配食などの提供まで行っているところもあり、サービス形態はさまざまだ。また利用者も、高齢者のみと限っているところがある一方で、障害者や子どもなど、支援の必要な人すべてを受け入れるところもある。介護保険法や自立支援法の指定事業所になっているところもあれば、利用者からの利用料だけで運営しているところ、あるいは両者を組み合わせて運営しているところもある。

 1980年代半ばから全国各地で始まった草の根の取り組み。大規模施設では落ち着けない、あるいは施設では受け入れてもらえない認知症高齢者に、少しでも安心して過ごしてもらいたいと願う介護経験者や元介護職員・看護職員などによって始まった。

 宅老所の多くは民家などを活用し、通い(デイサービス)の形態から出発している。大規模施設では問題行動のある困った利用者という烙印が押された方も、宅老所ではお茶を飲んだり談笑したりと、落ち着いて過ごされる姿が見られる。1998年の全国調査(宮城県実施)では、600か所の宅老所があると報告されているが、宅老所の定義が不明瞭であるため現在の実数は定かではない。

 1998年2月には、宮城県松島町で第1回目の「全国宅老所・グループホーム研究交流フォーラム」が開催され、それを機に1999年1月には、宅老所の実践者やそれを支援する仲間がつながって「宅老所・グループホーム全国ネットワーク」が発足した。家庭的で、一人ひとりの生活リズムに合わせた柔軟な宅老所のケアは、「逆デイサービス」や「ユニットケア」「地域共生ケア」「小規模多機能ケア」などの実践を生み出すなど、日本の介護や福祉のあり方に一石を投じた。

宅老所とは?

 一人ひとりの地域での暮らしを継続させるために、通い(デイ)だけではなく、泊まり(ショートステイ)や自宅への支援(ホームヘルプ)、住まい(グループホーム)などを一体的に提供する取り組み。

 多くのサービスメニューを用意して、時間や支援の内容ごとに異なるサービスを提供することとは本質が異なる。あくまでも高齢者一人ひとりの在宅生活を24時間365日連続的に支えるために、一つのサービス(多くの場合は通いが中心となる)が中心となって、必要に応じてかたちを変えて提供される、柔軟性のあるケアを指す。

 始まりは、宅老所が認知症の高齢者やその家族の思いに向き合い、寄り添うなかで、その方の暮らしを連続的に支援しようと、多機能化したサービスを包括的に提供するようになったことから。介護保険導入(2000年4月1日)以前の措置時代には、一部の自治体を除き、宅老所に公的な支援がなかったことが、制度の規制を回避し、こうした柔軟なケアを生むことにつながったと言われている。一人ひとりの高齢者が、それまで築いてきた地域や家族との関係性に配慮しながら支援できることが特徴だ。2003年には「小規模多機能ホーム研究会」が発足し、熊本県山鹿市で第1回目の「小規模多機能ホーム全国セミナー」が開催されている。

 小規模多機能ケアの有効性は、2003年6月23日に発表された「2015年の高齢者介護」(高齢者介護研究会報告書)にて注目を集めた。2006年4月からは介護保険法改正に伴い、「小規模多機能型居宅介護」が新設され、地域密着型サービスとして今後が期待される。しかし一方で、この新しい制度の指定を受けずに、従来どおり介護保険の指定を受けた通所介護(デイ)と自主事業を組み合わせて、小規模多機能ケアに取り組む宅老所も多い。

宅老所とは?

 ユニットケアとは、施設のなかで高齢者一人ひとりが、よりその人らしい時間を過ごせるように、という配慮から始まった、10〜15人前後の小グループでのケアを指す。

 1990年代後半、宅老所の実践に習い、画一的な流れ作業による集団ケアから脱し、高齢者に穏やかな日々を送ってもらいたいと願う特別養護老人ホームの施設長やスタッフによって始まった。

 現在では、施設内を小さく分けて家庭的な環境をつくるハード面が先行しているように見えるが、創成期は小グループで過ごすソフト面の取り組みが中心だった。認知症の高齢者数人と介護スタッフが一部屋で昼間をともに過ごす。施設内の和室などを茶の間のように見立ててお茶飲みをする、あるいは地域にある借家や空き家となった入所者の自宅に通って過ごす(逆デイサービス)など、あらゆるかたちが模索された。高齢者の穏やかな表情や笑顔を見る機会が増え、スタッフがケアのあり方を問い直し、自信をもつきっかけになっていった。

 1999年には、ユニットケアの実践研究と情報交流を目的に「特養・老健・医療施設ユニットケア研究会」が発足し、その10月には、第1回目の「ユニットケア全国セミナー」が福島県郡山市で開催されている。ユニットケア実践施設の職員たちが学会方式で発表し合う「気づきを築くユニットケア全国実践者セミナー」は、2001年12月に岡山県笠岡市で第1回が開催されている。

 2000年度にユニットケア施設の面積拡大の補助が認められたほか、2002年度には、全室個室・ユニットケアが制度化され、国の政策として高齢者介護施設の主流へと発展した。ユニット型で新設した施設だけではなく、既存の施設で創意工夫を重ねながらソフト面中心でユニットケアに取り組む施設も増加している。

 また、古くは「小舎制」の実践に取り組んできた障害者福祉施設や児童福祉施設でも、近年ユニットケアに取り組む施設が現われている。
宅老所とは?

 特別養護老人ホームなどに暮らす高齢者数人が、介護スタッフとともに昼間を地域の民家などで過ごす取り組み。施設における高齢者一人ひとりの願いに寄り添うことができるだけでなく、施設から地域に出かけることで、施設入所後も地域社会とのつながりを継続できるという特徴がある。

 施設がユニットケアを始めようと試行錯誤するなかで生まれた取り組みの一つ。高齢者が自宅から施設併設のデイサービス(介護保険導入以前のデイサービスの基本的な形態)に通うことに対して、高齢者が施設から地域へ通うので「逆デイサービス」と名づけられた。制度や加算の対象ではなく、施設側の自発的な実践による。

 大規模施設のなかでは居場所を見出せず、落ち着くことのできなかった認知症の高齢者が、逆デイサービスでは包丁をもって料理をしたり、縁側でひたなぼっこをしながら談笑するなど、穏やかな日常を取り戻すきっかけとなっている。スタッフにとっても、少人数の高齢者との密な関わりを体験することで、利用者の細かな変化に気づき、施設での三大介護(食事・排泄・入浴)を中心とする作業的ケアから、利用者本人の願いや生活リズムを中心とする人間中心のケア(パーソンセンタードケア←現在、まだHP未完成)ヘと成長する場となっている。

 また、逆デイサービスを経験したスタッフは、施設内でのユニットケアに積極的・中心的に取り組むなどの報告があり、逆デイサービスを人材育成の場と位置づけているユニットケア実践施設もある。

 2003年12月には、特養・老健・医療施設ユニットケア研究会が、福島県郡山市で第1回目の「逆デイサービス全国セミナー」を開催している。

宅老所とは?

 施設がもつさまざまな資源や機能を地域に分散させること。たとえば、50人定員の施設がそのうち10人分を元の施設とは離れた場所に、小規模特養などを新たに開設して移行することなどが挙げられる。小規模の施設を地域に点在させることで、高齢者が住み慣れた地域で、生活や人間関係を断ち切ることなく自分らしく暮らし続けられることを支援する。ユニットケアの発展形として、宅老所などの小規模ケア事業所同士の連携や発展系として、実践が広がっている。

 具体的には、おおよそ小学校区ごとにサテライト拠点を設け、ニーズに応じて、そこでデイサービスやショートステイ、ホームヘルプサービス、小規模多機能ケア、地域密着型小規模特養、ケアプラン作成、配食サービスなどを実施する。利用者は徒歩圏内で必要とするサービスを受けることが可能になる。

 地域サテライトケアには、施設を運営する一法人が自前でサテライト拠点を設ける場合と、施設や宅老所、地域住民の団体などが地元でネットワークを組んで協働で行う場合がある。利益誘導を回避して地域の福祉力アップに貢献するには、後者のほうがより望ましい。

 2002年9月には、仙台市において第1回目の「地域サテライトケア推進サミット」が開催され、その会期中に「地域サテライトケア推進プロジェクト」が発足した。

宅老所とは?

 赤ちゃんから障害のある人、高齢者まで、誰もが地域で当たり前に暮らす実践のこと。宅老所の取り組みの一つで、場をともにすることだけではなく、地域でともに暮らすという広い概念も含まれる。多様な人が交わるなかで豊かな人間関係が築かれ、継続されることが特徴だ。

 地域共生ケアは、地域や研究グループによっては、富山型デイや宅老幼所、一体型デイ、あったかほーむ、ぬくもいホーム、統合ケア、幼老ケアなどの呼称がある。

 実践例としては、「富山型」が有名だ。富山型の始まりは、1993年に開設された富山県の事業所「このゆびとーまれ」とされる。通い(デイサービス)をベースに、誰でもいつでも利用できるサービスを目指してきた。高齢者、障害者、子どもという縦割りの福祉を脱し、年齢や障害にこだわらずに、地域という視点から横断的に受け皿を広げる。高齢者が赤ちゃんと関わり合う愛情あふれる自然な表情や、伝統的な大家族のもつ豊かな交わりがみられる。人のつながりが希薄化している今日において、地域共生ケアが果たす役割は大きい。

 2003年9月に、富山市で初めての「地域共生ホーム全国セミナー」が開催され、2年に一度、富山市を会場に開催されているほか、研究者を中心に地域共生ケア研究会も発足している。