東北は、雪国とも言われ、1年の半分は雪につつまれた生活が続く。
雪がコンコン降る
人間は
その下で暮らしているのです―敏雄
この詩は、東北の寒村、山形県山元村の中学教師、無着成恭が学級文集をまとめ世に出した『山びこ学校』の巻頭に載り、各界の方々から注目された。この詩は、炭焼き仕事で学校に来られなかった少年、敏雄の詩である。
雪国の生活は、厳しいものがある。一度油断すると、生命にかかわることが多い。例年、雪による犠牲者があとを絶たない。
昭和48年10月、車いすを使用している障害者が全国から集まり、山形で第6回目の車いす全国集会が開かれた。この集会が地方の小都市で開かれたのは、山形が初めてというから、それまでは全国の大都市だけで行われていたことになる。山形の集会には、全国から400人を超える車いすの障害者が、汽車や飛行機を乗り継いで集まってきた。
この大会では「地域をつくる」というテーマで、3日間真剣な討論が繰り広げられた。
そのなかで、地元実行委員会が「雪国」で生活する障害者の実態を知ってもらおうと、自作の映画をつくって発表した。その題名が『雪もう一つの障害』という映画だった。
雪国では、降り積もった玄関の雪を除雪してもらえないと、外にも出られない。買い物にも役所の手続きにも行けない。道路は、きれいに除雪されないと介添者がいても大変である。
雪という特殊な条件のなかで生きることの厳しさは、そこに生活した者でなければ、計り知れないものがある。「雪もう一つの障害」。
この大会では終始、「誰もが人間らしく、ともに生きられる地域社会」を、誰が、どうやって作るかが問われた。黙っていては何一つ進まない。みんなと手を組まねばと叫ばれた。